東大社研「派遣社員・請負社員アンケート」批判

派遣法改正に反対する派遣業界に偏ったアンケート調査の実態
派遣労働者も派遣切り被害者も派遣法改正を望んでいます


東大社研(東京大学社会科学研究所)「人材フォーラム」が発表した
「製造派遣禁止に反対の労働者が多い」とする調査結果に疑問の声が上がっています
(「請負会社・派遣会社の生産現場で働く人々の働き方とキャリア意識に関する調査」)。

大半の派遣労働者や派遣切り被害者が
登録型派遣の原則禁止やみなし雇用制度創設などを内容とする派遣法改正を望んでいるのに、
人材フォーラムの調査は、派遣労働者に「派遣法改正は失業を招く」との誤解を与え
「派遣法改正に反対」との回答を誘導しているからです。

今回のアンケート調査の疑問点をいくつか列挙します。

1.政府が国会に提出している派遣法改正法案は
 製造業務における登録型派遣を禁止する一方、
 常用型派遣を今までどおり存続することとしています。

 したがって、
 「製造業務で派遣社員として働くことができなくなる」ことを
 前提とする設問(問26など)は、そもそも前提が間違っています


2.「問26」は、以下のとおり、派遣法改正法案の内容とは異なる
 「製造派遣禁止」を前提としており、
 「派遣法改正によって失業する」と強く印象付ける内容となっています。


問26 もし今後、労働者派遣法が改正されて製造業務で派遣社員として働くことができなくなったとしたら、あなたが失業する可能性はどの程度あると思いますか。

 1)かなりある
 2)ある程度ある
 3)あまりない
 4)まったくない
 5)わからない


中立的な立場に立って
製造派遣の登録型禁止と派遣労働者の今後の雇用について質問するのであれば、
以下のような設問にすべきです。

問26 もし今後、労働者派遣法が改正され、製造業務においては、登録型派遣が禁止され、常用型派遣のみが存続することになったら、あなたの雇用はどうなると思いますか。

 1)派遣先の直接雇用に切り替えられる
 2)常用型派遣に切り替えられる
 3)請負契約に切り替えられる
 4)失業する
 5)わからない


3.問29は「製造業務での労働者派遣を法律によって禁止することについて
 あなたは賛成ですか、反対ですか」と質問しています。
 しかし、前述のとおり、派遣法改正法案は
 製造業務での労働者派遣について登録型派遣を禁止し
 常用型派遣に誘導するものです
から、
 この質問は派遣法改正法案とは全く異なる内容について尋ねているものと
 解釈せざるを得ません。
 しかし、調査目的においては
 「労働者派遣法改正による製造派遣禁止に関する評価などを
 明らかにする」としており、支離滅裂です。


4.データの読み方が間違っています。

1)数年後に希望する働き方では、「47.4%」が正社員を希望しているのに、
 「当面では正社員希望は少ない」が見出しになっています。
(図表12)
 「今の請負・派遣会社の製造現場の管理者やリーダー」や
 「今の請負・派遣会社の営業所や本社スタッフ」など
 「正社員」を想定して回答しているものを加えると
 「55.6%」の派遣労働者が正社員を希望しています。
 一方、請負・派遣社員を希望するものは「6.1%」しかいません。

2)調査結果では、働いている工場で正社員として採用する提案があった場合
 「76.2%」(図表13)が「応じる」、
 有期契約社員の提案でも「63.5%」(図表14)が「応じる」と答えており、
 直接雇用を望む声が圧倒的に多いことを示しています。

 ところが、コメントでは「採用提案を断わる者の比率はそれほど高くない」と記載され、
 直接雇用を望む声が圧倒的に多いことには触れていません。

3)全体的に、派遣という働き方に否定的なデータや正社員を望むことを示すデータには触れず、
 派遣という働き方に肯定的なデータを強調しており
、中立的な調査結果とは言えません。

5.人材フォーラムの目的もメンバーも中立性がありません

 人材フォーラムは、そもそも派遣会社・派遣先企業(「ユーザー企業」)と研究者の
 交流の場を設けることを「目的」としており、派遣労働者の立場はありません。
 メンバーも研究者と派遣会社、派遣先企業により構成されており、
 労働者(または派遣労働者)を代表するメンバーは含まれていません

 また、人材フォーラムは
 スタッフサービス・ホールディングスなどからの多額の寄付で運営されてきた
 「人材ビジネス研究寄付研究部門」を引き継ぐものとして開設されたものです。

6.業界団体・派遣会社経由のアンケートに本音で答えられません

 今回のアンケート調査は、「製造派遣原則禁止に反対」を表明し、
 また「製造派遣を原則禁止すると失業が増える」と公言している
 「日本生産技能労務協会」に加盟する企業を経由して行われており、
 中立的な立場で行われたものということはできません。
 ましてや、アンケートを配布したのは
 2008年秋から2009年春にかけての一斉派遣切りによって
 派遣労働者の仕事と住まいを奪った製造派遣会社です。
 派遣労働者が本音を答えられるアンケートではありません。

7.派遣切り被害者の声が反映されていません

 製造業の派遣切りで多くの派遣労働者が仕事を奪われた中、
 派遣で働き続けることができた人たちがアンケートの対象となっており
 派遣切りされて仕事を失った人たち、
 今なお失業に苦しんでいる人たちの声は反映されていません。

-----
【関連リンク】
・東京大学社会科学研究所
 http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/

・人材フォーラム研究成果報告(東大社研ウェブサイト内)
 http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/jinzai/output4.htm
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